マネークリッパー吉沢
服を売っていたときの話

こんにちは、吉沢です。
今日は服を売っていたときの話です。
特に写真には関係ありません。
前の記事で少し触れたのですが
ほんの一時期だけ服を売っていたことがあります。
別に、本当に服のセンスは分からないし
好きだとか言うわけでもなかったけど
なんとなく服が売ってみたくて、働かせてもらっていました。
これが、思っていた以上に本当にめちゃめちゃ面白かった。
*
その服屋さんは、安さで枚数をこなすブランドではなく
どちらかと言うと少し単価が高めなブランドでした。
なので人数をこなすのはもちろんですが
セット率(1人に数点買ってもらう)を重視していました。
まず、私は服屋さんで話しかけられるのが嫌いです。
いや、あれが好きな人なんかあんまりいないか。
服屋さんで働く人なんかお洒落で当たり前に見えてるし
そんな人に、じつは「あ、こんな服買うんだ」と思われるのが恥ずかしい。
ださい服買っていくな〜と思われたらどうしよう・・
と言う気持ちが強かったのかも。
でもいよいよ、それをやる側になったのです。
*
結果1年働いて、私が確立した自分の売るスタイルはこう。
お客さんが入ってきて、尻込みせずに一発目声を掛ける。
さっき自分で「声かけられるの嫌って言ってたくせに」
と思うかもしれませんが、
働いているうちにその
話しかけられる『内容』が嫌いだったのに気付きました。
なので、この一発目かける声の内容が大事なのかなと。
ある日。
自分が服屋に入ってすぐ、触った服に対して
「それかわいいですよね」と言った店員さんがいた。
「えっ」ってなって
自分でびっくりしたことがあります。
自分で服を触っておきながら、
でも別にその服を可愛いと思って触ったわけじゃなかったからです。
触る=良い
と思ってるわけでもないのか、という。
だから、自分が可愛いとは思ってないものを
「かわいいですよね」と言った店員さんと
違う価値観なんだ、と思って溝ができてしまうんだなと。
なので、一発目にかける声は「挨拶」にしていた。
そして挨拶して、でスッと離れる。
この、挨拶の入りも大事。
自分が少し尻込みしつつ、でも挨拶しなきゃ・・
で話しかけると、お客さんとの意味のわからない若干の距離ができる。
その一瞬の違和感が、お客さんも自分も
居心地の悪さにしかならない。
なので、入ってきたお客さんみんなに「均等に挨拶」をする。
売りたくて話しかけるわけじゃなくて
入ってきてくれてありがとう!の挨拶を
お客さんみんなにやっているのを、他のお客さんに見せる。
これを第一段階として区切っていた。
*
この挨拶をしたときのお客さんの一瞬の反応で
その人がどういうタイプの人か見極めるようにした。
ありがとうございます!って笑顔で言ってくれる人もいるし
一見普通に返事はしてくれていても、一瞬ひるむ人もいる。
もし前者だったら
「声をかければ聞こえる範囲」で「仕事をするフリをする」。
こういう人は、人前で何か話したり
聞かれれば自分の意見を出せるような人が多い気がするので
ある程度 店員が近くにいても気にしない人が多い。
そこまで近づけると、次の良いタイミングで確実に話しかけられるし
聞きたいことはあちらから聞いてくることも多いので
的確かつ時短で人数をこなせる。
もし後者だった場合
私は思いっきり引くようにしていました。
「大きい声をかけないと聞こえない距離」で「別の仕事をする」。
なんなら、そのお客さんがもし服で疑問が出てきたとき
「でも自分から話しかけられないな」とまで思わせるぐらいの距離感。
その距離感を確実に保って,
お客さんにお店を一周させる。
でもただ一周させるのではなく、
そのとき何を見てたかを確実に全部記憶していくようにしていました。
足を止めた場所、服のどの部分を見てたか、何色が多いのか
ボトムなのかトップスなのか、見ている時間などなど。
これを、数人のお客さんで同時並行でやるので
実はめちゃめちゃ頭をフル回転させているのです。
この店どんな服があるんだろうとか、何かないかなと
ぼんやり考えてる人はその一周で大抵出ていく。
なので一周して、一歩足が外に向いた人にはまた大きく「挨拶」。
ここから追わない。
一周しても、足が外に向かなかった人に対して
記憶した知識をフルで使うのが好きだった。
二週目の人は本当に必ずどこかに戻る時間がある。
それを触った瞬間に声をかける。
これを逃すとアウト。
でもこの、挨拶した瞬間にひるむ系の人は
自分に対して真正面から話しかけられるのが苦手な人も多い。
なので、私はこの二週目の戻ってきた場所に対して
仕事を瞬時に作るようにしていた。
別に品出しも足りているけど、バックから新しい服を用意していて
その二週目の場所に品出しをするフリをする。
このフリを、お客さんの二週目と同じタイミングで合わせる。
たまたま近くに来たていを装って
「それさっきも見ていらっしゃいましたね!笑」
ぐらいのテンションで話しかける。
あくまで、自分の体は品出しをしているので、
足先はあえてお客さんに向けない。
この声かけで(あっほんとだ)って笑ってくれる人には
こっから一気に押しかける。足先はお客さんに向ける。
押す場合、お客さんと「共感」できるのことが大事。
なんでその服を触ったのか1週目で見極められなかった場合は
「このデザインかわいいですよね」とか「新作なんですよ」「私も持ってるんです」
なんて言っても、自分だったら正直「はあ、、」としかならない。
リアクションを貰えなければその人の好きなものは分からないし、
共感がなければ「この人から買いたい」とは繋がらない。
お客さんがその服のどの部分を見ていたか、はたまた全体を見ていたのか
目線を必ず見なくてはいけない。
例えば、何かTシャツにプリントされた絵を見ていたのであれば
その絵に対して突っ込む。
何を見ているかわからなかった場合は、聞くのもありだと思ってる。
「なにか『袖口』が気になっていますか?」「その服の『形』ですか?」など
フワッとしててもいいので、どこかピンポイントで見てる部分をひとつ攻めると、
「そうなんですよ」とか「いや、好きなんだけどサイズが」・・
みたいな形でなにかしらリアクションをもらえる確率が高くなる。
ひとつリアクションを貰えるだけで
・その人が何を基準で物を買うのか(値段なのか、勢いなのか、珍しさなのか・・とか)
がかなり絞り込める。
そこを基準に押し込んでいってた。
さらに、事前に店内を一周泳がせているので
ここでお客さんが聞けなかった分・話していなかった分を
プラス1で追加のリアクションが貰えることも多い。
*
一点迷っている物があれば、さっさと試着室に入れるようにしていた。
鏡で当てるのも良いけど、
着ないと私も本人もわかんない物が結構ある。
「家に帰って着たらやっぱり違った」が一番誰も幸せになれないと思う。
この試着室に入る時必ず他の服をもう一点持たせる。
ここはある程度この人の趣味は無視して
試着に持っていった服に合わせて、着ると可愛いものを持たせる。
その持たせた服も追加で売れたらもちろん万々歳だけれど
この場面では売りたくて持たせるわけではない。
気に入った服を満足して買っていったとして
その後自分で組み合わせられなかったらどうだろう?
着たいのに着れない現象も少なからずある。
こう言う服を合わせておけば間違いないという
定番の組み合わせを着せて
欲しい服をもっと輝かせて見せることが大事だと思ってる。
着てもらったあと「こう言う合わせ方はあんまりしない」
ともし言われたら、
「では普段どう言う服をよく着ますか?」と
その人のクローゼットの中を聞くと、その人の傾向も、
次に合わせたら良い服も持ってこれる。
それを繰り返して
お客さんの趣味をちゃんと理解して
似合わないものは似合わない、買ってもそれ本当に着る?
みたいなものを繰り返して
着せ替えのように大量の服を見せていっていた。
ちなみに店長は、
売りたい点数の倍の服を見せろと言っていたのを
何故かいまだに思い出す。。
*
こういった流れで試着まで持っていく、
服を楽しんでもらいながら買ってもらう。
「よしざわさんと一緒にまた選びにきました」
みたいなお客さんをどんどん増やすのが楽しく、
仕事ではあったけど本当に楽しかった。
辞める前には店舗内で1番売り上げを持っていたし
東京の本社からたまに来る偉い人に、東京の店舗にこないかと誘われたこともあったぐらい
自分の中では気に入っていたし楽しかった。
別にその経験がどう、とはつながらないけど
その期間毎日やっていた
とにかく尻込みせずに自分から声をかける精神が
めちゃくちゃ鍛えられて
知らない人と会話するのが苦じゃない一つの要因に
なったのかなあと少し思う。
服に限らず、物を売るって大変だろうな。
多分もうやらないけど、またいつか服とかを売るのも楽しそう。
今日は特に暑いですね。
半袖着てスーパー行かなきゃ。
おわり
マネークリッパー吉沢